害虫大辞典 日本昆虫学会名誉会長 安富和男氏 監修
害虫辞典
カメムシ
ヘコキムシやクサムシなどさまざまな異名を持つ不快害虫の代表株
半翅目<はんしもく>・異翅亜目<いしあもく>・カメムシ下目<かもく>に属する昆虫をカメムシと呼び、日本から18科約400種が記録されています。口器は針状の吸収口式で、多くは植物の汁液を吸う農林害虫です。またサシガメ科のカメムシは小昆虫の体液を吸ってくらすので益虫の部類に入りますが、人に刺咬の害を与える害虫もいます。
カメムシの仲間は不完全変態で、5齢期の幼虫時代をへて成虫になり、蛹の時期はありません。
越冬のため晩秋の頃に人家、旅館、事業所などに集団で侵入 悪臭の正体は揮発性の強い油状の物質で、主成分はヘキセナールなどのアルデヒド類です。成虫では後胸の腹面にある左右1対の分泌口から、幼虫では腹部背面の分泌口から悪臭物質が放出され、空中に揮散します。 カメムシの悪臭はアリなどの外敵に対する防御物質の役割を果たし、また仲間たちに危険を知らせる警報フェロモン、群れをつくらせる集合フェロモンとして働きます。人間に嫌われる悪臭もカメムシにとっては大切なものです。 カメムシの仲間には夜間灯火に飛来するものが多く、室内に悪臭が漂う被害が出ます。さらに、越冬のため晩秋の頃に人家、旅館、事業所などに集団で侵入して くる種類があり、畳の下や天井裏に潜りこんで激しい嫌悪感を与えます。東北地方の調査によれば、クサギカメムシ、スコットカメムシをはじめツマジロカメム シ、ナカボシカメムシ、ベニモンカメムシなど5科19種が問題を起こす種類です。 越冬のために屋内へ侵入したカメムシは翌年の春まで過ごすので日常生活がおびやかされます。発生源が山林や原野であるため事前の防御は極めて困難であり、 開発によって人の居住地が拡大して行くために、今後も問題は続くと思われます。屋内に侵入したカメムシ対策としては、ペルメトリンなど燻煙剤処理が筒便で 効果的だったという実験例が出されています。 |
カメムシには保護色をした種類もありますが、美しい色彩、斑紋を装った種類が多く見られます。これは防御物質としての悪臭の持主ということを捕食性天敵に見せつける警戒色の護身術です。
カメムシの幼虫には群れをつくってくらすものが多く、成虫でも集団生活をする種類があります。集団の維持には臭気成分を弱く流して集合フェロモンに使いま す。悪臭のアルデビドは強く放出すると逆に警報フェロモンとなって逃避行動が起こり集団は分散します。
南米にはロドニウスやトリアトマという大型のサシガメがいて、人を激しく刺すだけでなく、眠り病の1種シャガス病を引き起こし、高熱が出て神経が冒されます。日本でも1960年代の初めまでトリアトマが沖縄にいました。