害虫大辞典 日本昆虫学会名誉会長 安富和男氏 監修
害虫辞典
コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus Giles)
コガタアカイエカの和名は「小型のア
カイエカ」に由来しますが、黒い感じの蚊で、口吻の中央に白帯を持っているのが特徴です。幼虫の呼吸管は非常に細長く、長さを幅で割った呼吸管比は
6~10です(写真参照)。
幼虫は水田、沼、城の堀などの広い水域で育ち、成虫は遠距離まで飛翔します。分布地域は日本、韓国、中国、東南アジアなどです。越冬態は成虫、発生のピー
クは盛夏です。
コガタアカイエカはイエカ類の中で最も激しく吸血します。しかも日本脳炎ウイルスの媒介をするので衛生上重要な蚊です。豚がウイルスの増幅動物として注目されています。豚の体内で増えたウイルスが吸血した蚊に移り、人への感染源となりま
す。脳炎ウイルスは蚊→豚→人の順序をたどるわけです。
以前、水田のコガタアカイエカは農薬のまきぞえで死んでいましたが、近年、有機燐剤に強い抵抗性が発達し、問題になっています。