害虫大辞典 日本昆虫学会名誉会長 安富和男氏 監修
害虫辞典
皮膚炎を起こす毛虫と蛾
かぶれる毛虫、刺す毛虫は全ての毛虫の中で約2% |
毛虫の体に密生している長い毛は有毒だと思われがちですが、大部分の長毛は自分の体を保護するために備えたもので、刺されることはありません。白い長毛の 密生したアメリカシロヒトリの幼虫が全く無毒なのはその好例です。かぶれる毛虫、刺す毛虫は全ての毛虫の中で約2%に過ぎないといわれています。毛虫を不 必要に怖がらず、有毒な毛虫を憶えておくことが大切です。
毒棘の他にも毒針毛まで備えている毛虫も 要注意の有毒な毛虫はドクガ科、カレハガ科、イラガ科、マダラガ科、ヒトリガ科に属していますが、ドクガ科やカ レハガ科などの中にも無毒な種類があります。また、ヤママユガ科、ヤガ科やタテハチョウ科の一部に軽い皮膚の症状を起こす毛虫が知られてます。 毒毛<ドクモウ>は「毒針毛<ドクシンモウ>型」と「毒棘<ドクトゲ>型」に大別されます。毒針毛をもつ毛虫はドク ガ科のドクガ、チャドクガ、モンシロドクガ(別名クワノキンケムシ)、キドクガ、フタホシドクガ、ゴマフリドクガなどや、カレハガ科のマツカレハ、ツガカ レハ、クヌギカレハ、リンゴカレハなどであり、ドクガ類の毒針毛は非常に微細です。 |
ドクガ類による皮膚炎は痒さ、イラガ類による皮膚炎は痛さが特徴です。
万一ふれてしまった場合はすぐに流水で洗いましょう
毒の正体はいずれも蛋白性のもので、ドクガ類の毒成分としてはプロテアーゼ、エステラーゼ、キニノゲナーゼ、ホスホリパーゼA2、ヒスタミン、イラガ類の 毒成分としてはヒスタミンと2種の蛋白性発痛物質が検出されています。
治療には坑ヒスタミン剤や副腎皮質ホルモン剤の外用、あるいは坑ヒスタミン剤の内服が有効です。
ドクガ類の成虫や毛虫にふれた場合はすぐに流水で洗うようにすると症状がひどくならずにすみます。擦ったり、掻いたりすれば毒針毛が皮膚に刺さって症状を 重くします。