害虫大辞典 日本昆虫学会名誉会長 安富和男氏 監修
害虫辞典
毒液を出す虫
外敵から身を守るための武器「毒液」 |
情報化学物質「フェロモンと他感作用物質」
「一寸の虫にも五分の魂」という諺どうり昆虫はさまざまな化学物質を生産し、仲間同士や他の生物に対する信号刺激に利用しており、最近ではこれらを「情報 化学物質」と総称しています。情報化学物質は次のようにフェロモンと他感作用物質に大別されます。
情報化学物質 semiochemical
| 1. | フェロモン pheromone 同じ種類の仲間に作用する化学物質。性フェロモン、警報フェロモン、道しるべフェロモン、集合フェロモンなど。 |
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| 2. | 他感作用物質 allelochemic 他種の昆虫や生物に作用する化学物質。
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| 生存競争に生き抜くための必需品 今回取り上げる毒虫の毒液は代表的 なアロモンであり、自己
防衛物質です。毒液を分泌する昆虫にとっては生存競争に生き抜くための必需品ですが、人間は毒液で大きな被害を受けます。ツチハンミョウやマメハンミョウなどのツチハンミョウ科の甲虫が脚の関節から出す黄色い体液にはカンタリジンが含まれています。 |
頬をかすめるだけで皮膚炎が発症
アオバアリガタハネカクシの体液にはペデリンが含まれています。虫を払いのける時に体液がつきやすく、又、飛翔中の虫が頬をかすめたときにも被害が起こり ます。症状は線状のミミズ腫れとなることが多く、線状皮膚炎と呼ばれます。さらに虫が眼に入ると強い結膜炎や角膜炎を起こすので眼科医の治療を受けなけれ ばなりません。
ツチハンミョウ、マメハンミョウ、アオバアリガタハネカクシの体液が皮膚についたらすぐ水で洗うことが大切です。治療には抗生物質入りのステロイド軟膏の 塗布が有効です。

分泌して外敵からの護身
に使う昆虫がいます。これらの昆虫は一般に「毒虫」と呼ばれ、夏季に活動する甲虫類が主体です。毒成分はカンタリジン、あるいはペデリンで人に皮膚炎や眼
の炎症を起こします。また、昆虫の仲間ではありませんが、ヤスデ類も青酸を含んだ体液を分泌し、皮膚炎のほか中毒事故を起こす例があります。今回はこれら
の毒虫について紹介します。毒針毛でかぶれを起こすドクガなどについては別の機会に述べます。
なアロモンであり、自己
防衛物質です。毒液を分泌する昆虫にとっては生存競争に生き抜くための必需品ですが、人間は毒液で大きな被害を受けます。