害獣辞典 日本昆虫学会会名誉会長 安富和男氏監修

コウモリ

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アブラコウモリ(イエコウモリ)

[国内の分布]日本国内では、北海道中部以北を除くほとんど全国に分布する。

ただし伊豆諸島や南西諸島などには生息の確認されていない島もある。

日本に生息する中では唯一の、住家性、すなわち家屋のみを住みかとする

コウモリであり、日本では人にとって最も身近なコウモリであると言える。

その習性から、イエコウモリの別名がある。

[形態]大きさは、前腕長30.3~35.5㎜、頭胴長38~60㎜、尾長29~45㎜

体重5~11g。体毛は黒褐色から暗灰褐色。皮膚は灰褐色または

明るい褐色。幼獣は黒っぽい。

[繁殖]雌は満1歳から出産し、7月初旬に通常は2~3頭の仔を産む。30日程で

離乳して巣立つ。10月に入ると交尾を行い、精子は雌の生殖器官に貯えられたまま冬を越す。冬眠あけの4月下旬になってから排卵がおこり、受精・

妊娠する。寿命は雌で5年程と、他のコウモリと比べると短い。雄は1年以内に死んでしまうことが多い。

[食性]夜行性で、昼間はねぐらで休み、日没近くから夜間に飛び回る。カ・ユスリカ・ヨコバイなどの小型昆虫類を主食とし、ウンカ・甲虫なども捕食する。

活動は日没2時間程が最も活発で、河川などの水面上や田畑・駐車場などのオープンスペース、あるいは街灯の近くなどをヒラヒラと不規則に飛び回り、飛翔昆虫を捕食する。

[生活の特徴]市街地を中心として平野部に広く分布する。都心部の市街地にも数多く生息し、夕刻の空に普通に見られる。人家のない山間部などには生息せず、自然洞窟などでの記録はまれにしかない。1.5㎝程の隙間があれば出入りする事ができ、家屋の瓦の下・羽目板と壁の間・戸袋の中・天井裏・換気口など建物の隙間などを主なねぐらとする。都市部では、道路・鉄道等の高架や橋の下・大型倉庫内などもねぐらとなる。数頭の家族単位(雌と幼獣)で暮らすことが多いが、幼獣を含む雌の繁殖集団では、50~60頭、時には200頭にもなる。成獣の雄は比較的1頭で暮らすことが多い。

 

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