家屋内に住むダニの仲間
幼虫は6本脚、成虫になると8本脚に
ダニは節足動物の蛛形網<しゅけいこう>・ダニ目<もく>に属し、昆虫とは次のような違いがあります。昆虫の体は頭・胸・腹の3部に分かれていますが、ダニの体は顎体部と胴体部からなり、環節がありません。昆虫の脚は3対6本ですが、ダニの場合、幼虫は6本脚、成長して若虫や成虫になると8本脚に変わります。
顎体部には1対の鋏角<きょうかく>・触肢<しょくし>と口器(口下片<こうかへん>)をもっていますが、複眼はもたず多くのダニでは単眼もなく、触角や・翅もありません。
ダニの仲間は世界から約5万種、日本から1,700種が記録されており、気門の数や位置により7つの亜目<あもく>に分類されています。英語にはダニを表す語が2つあり、大型のマダニ類をtick、その他をmiteと呼びます。
ダニは昆虫より小さいのが普通で、大多数のダニの成虫は体長0.1-0.75mmの範囲に入りますが、鳥に寄生するマダニのメスは吸血後に3mmの大きさになります。家屋内に住み衛生上の問題を起こすダニ類(mite)は中気門亜目のワクモ科、オオサシダニ科、無気門亜目のコナダニ科、チリダニ科に属する種類が主体です。
これらのダニは種類によって次のような害を与えます。
1.ネズミや鳥の体や巣の中からはい出して人から吸血する:イエダニ、トリサシダニ
2.皮膚炎を起こす:ツメダニ、シラミダニ
3.畳の中、室内塵に住み、喘息や鼻炎のアレルゲンになる:ケナガコナダニ、チリダニ(ヒョウヒダニ)。
4.貯蔵食品(穀類・穀粉や菓子など)の品質を低下させ、混入異物になる:コナダニ類
仲間同士の信号にフェロモンを巧みに使う種も
なお、野外性のツツガムシ類(前気門亜目・ツツガムシ科)は恙虫<ツツガムシ>病を媒介する危険なダニです。野生のネズミから幼虫が人に移り、吸血の病原体のリケッチャに感染して発病します。
ダニの仲間は卵 → 幼虫 → 若虫<ワカムシ> →成虫の順に成長します。種類によっては若虫に2期(第1若虫・第2若虫)を経過したり、若虫期に環境や栄養の条件が悪くなるとヒポプスを形成するものがあります。ヒポプスは移動若虫とも呼ばれ、コナダニ類の多くに見られるステージです。ヒポプスは昆虫に例えれば蛹に相当し、硬化した体と発達した脚や吸盤をもっており口器が退化して食物をとりません。しかし、乾燥などの不適当な環境に耐えて生き抜くことが出来、動物に付着してヒッチハイクを行います。ヒポプスを運ぶ動物はネズミ、コウモリなどの哺乳類、鳥類や昆虫類です。昆虫類では甲虫の仲間やアリ、ハチ、ハエ、カ、ノミ、コオロギ、ゴキブリなどが利用されます。コナダニ類は仲間同士の信号にフェロモンを巧みに使っています。成分として警報フェロモンは蟻酸ネリル、集合フェロモンはランドルアー、性フェロモンはアカリジアールであることなどがわかってきました。
家屋内に住むダニの仲間