ムカデの仲間
百足(ムカデ)どころじゃない足の数を持つものも?
ムカデの仲間は節足<せっそく>動物・多足上綱<たそくじょうこう>Myriapodaの唇脚綱<しんきゃくこう>(ムカデ綱)Chilopodaに属し、世界から約2,800種、日本からは約140種記録されています。日本産の唇脚綱にはオオムカデ目<もく>、ジムカデ目、イシムカデ目、ゲジ目の4グループがあります。
唇脚綱の体は細長く、頭に続く多くの胴節<どうせつ>から1対ずつ生えている歩脚<歩脚>(歩肢<ほし>)の数は15対から177対に及びます。漢字では百足と書き、英名のcentipedeも「百足」の意味です。歩脚は基節、転節、前腿節、腿節、脛節、?節の6節から構成されています。
頭部には糸状の触角が1対あり、眼はあるものとないものがあります。頭部の下面に毒顎<どくあご>(顎肢<がくし>)をもつのもこの仲間の特徴です。最後部の胴節から生えている1対の脚は曳航<えいこう>肢と呼ばれ、歩行には使われてませんが敵に出会ったとき上方へ高く掲げて触角のように動かします。敵への威嚇行動と思われますが、頭部に見せかける擬態の約を兼ねているのかもしれません。そうだとすれば嚇し、騙しの巧妙なテクニックです。
ムカデの仲間は適度の湿り気をもつ林の落葉層、石の下、樹洞などを主なすみかとし、肉食性で獲物は生きている昆虫、クモ、ダニ、ミミズです。しばしば人家に入りこんでゴキブリなどを捕食します。
交尾はおこなわず、オスの出した精包<せいほう>(精子の入ったふくろ)をメスが生殖口から取り込む生殖法です。オオムカデ類とジムカデ類は落ち葉の下などに数10個の卵を1-2時間かけて産み、卵や若齢幼虫を保護する習性をもっています。イシムカデ類とゲジ類では卵を1個ずつばらばらに産み、卵の保護習性はありません。ムカデ類の寿命は長く、約5年に及ぶと推定されています。
薬にもなるムカデの毒、でも刺されたら痛いんです
オオムカデ類の単眼<たんがん>は形態視覚が弱いため索餌<さくじ>行動は主に触覚に頼っています。歩いている昆虫が体にふれると毒顎で咬みつき、獲物を毒液で麻痺させてから咀嚼して食べる方法を使います。接触感覚を鋭敏にしておくために、触角や歩脚、胴節部の感覚毛を口器で丹念に拭って湿り気を与えています。
ムカデは毒を外敵からの護身にも使い、人が咬まれる被害を受けます。とくにオオムカデ類は大形で毒量が多く毒性も強いので危険な毒虫です。毒液の主成分はセロトニンとヒスタミンであり、咬まれた瞬間に激痛を起こして発赤、腫脹、発熱などの症状が数日間続きます。ときにはアレルギー反応を伴うことがあるので要注意です。治療には副腎皮質ホルモン外用剤と抗ヒスタミン剤内服を併用するのが有効です。
ムカデの毒成分は用法によっては人体に薬効をもたらすので古くから薬として利用されてきました。ムカデを食用油に浸した「ムカデ油」は火傷、切り傷の治療薬になります。
毒を備えたムカデも小型哺乳類に食べられてしまうことがあるようです。
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