害虫辞典 日本昆虫学会会名誉会長 安富和男氏監修

ユスリカ、チョウバエ

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ユスリカ、チョウバエの仲間

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飛翔中の安定を保つための小さな棒状の後翅を持つ長角類

双翅目<そうしもく>(ハエ目)Dipteraの昆虫はハエやアブの短角亜目<たんかくあもく>セスジユスリカ成虫Brachyceraと蚊・ユスリカ・チョウバエなどの長角<ちょうかく>(糸角<しかく>)亜目Nematoceraという2グループに大別されます。触角の短いハエなどに比べて、今回とりあげる長角類の触角は長くて糸状です。
長角(糸角)亜目は7下目<かもく>26科に分類されており、双翅目の特徴として翅が1対2枚しかないように見えます。後翅は平均棍<へいきんこん>という小さな棒状の器官に変化して飛翔中の安定を保ち、ユスリカでは群飛する時に役立つようです。

チョウバエ類やケバエ類には「ハエ」の名前がついています。しかし、ハエの仲間ではなく、蚊やユスリカに近縁な長角類です。学者の中にはチョウバエでなくチョウ蚊の和名を使う人さえあります。
ユスリカ類、ガガンボ類、チョウバエ類、ブユ類、ケバエ類の幼虫はいずれも脚を欠き4齢を経過して蛹化します。

10m以上の高さに達っする蚊柱をつくるユスリカの仲間

ユスリカの仲間はユスリカ科Chironomidaeに属し、世界で約6,000種、日本から約700種が記録されています。成虫の体形は蚊に似ていますが吸血することはなく、寿命は1-3日から1週間位です。幼虫の生息水域は河川、湖沼、沿岸海水に及び、陸上にすむ種類までいます。多くは営巣して藻類や有機物を食べて育ちますが、水生の昆虫や小動物を捕食する肉食性の種類や植物中に潜りこんでくらすものもあります。水中にすむユスリカの幼虫は魚の鰓に似た気管鰓<さい>で水に溶けた酸素を呼吸します。蚊の幼虫(ボウフラ)が腹端の呼吸管で空気を取り込むのと違う呼吸法です。オス成虫は交尾に先駆けて群飛し、蚊柱を作る性質があり、オオユスリカやアカムシユスリカの蚊柱は10m以上の高さに達します。

ガガンボ科Tipulidaeは双翅目の中で最も種類数が多く、世界から約14,000種も記録されています。成虫の体形は体、翅、キリウジガガンボ成虫とくに脚が細長く、灯火に誘われて室内に飛来し、「蚊トンボ」という俗名で呼ばれます。幼虫の生態域は多岐にわたり、水生、半水生、陸生の種類があり、体形はうじ状です。

チョウバエ科Psychodidaeは4亜科に分類され、日本には74種生息しています。普通に見かける種類はチョウバエ亜科に属し、翅が幅広くて翅や体に鱗毛<りんもう>が密生しています。多くの幼虫は汚水にすみ腐植物を食べて育ちます。日本では成虫の体形を小さな蝶に見立ててチョウバエと命名されましたが、英名ではmothfly、すなわち蛾バエです。

ブユ科Simuliidaeはブユ亜科とオオブユ亜科に分けられ、日本には72種生息しています。東日本ではブヨ、西日本ではブトの俗名があり、微小な吸血性の昆虫です。卵は流水の水面または水中の草や石に産み付けられ、幼虫は腹端の吸盤で水中の植物などに吸着してくらします。幼虫の体形は中央がやや細い円筒形を呈し、雑食性です。

ユスリカ、チョウバエの仲間

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