害虫辞典 日本昆虫学会会名誉会長 安富和男氏監修

木材、竹材を加害する甲虫類の仲間

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新材を加害、なかには建材の中から成虫が羽化してくる事例も

木材を加害する甲虫の種類は非常に多く、ヒラタキクイムシ科、ナガシンクイムシ科、ヒラタキクイムシシバンムシ科、カミキリムシ科、ゾウムシ科、オサゾウムシ科、キクイムシ科、ナガキクイムシ科、タマムシ科などに属しています。これらの多彩な甲虫たちのうち、キクイムシ科、ナガキクイムシ科、タマムシ科などの多くは伐採後の日数が浅くて水分含量50%以上の新材を加害する種類です。原木丸太が製材加工されて建材に使われたあとでも幼虫が生育を続け、成虫が羽化脱出してくる事例が時々見られます。

今回紹介するのは「乾材」で生育を完了できる屋内害虫の甲虫類です。代表種のヒラタキクイムシは含水量約20%の乾材に適応した生活のプログラムを組み立てています。

乾燥した建材や家具を食害する甲虫たちは炭水化物、とくに澱粉を栄養源として使うために澱粉含量の多い辺材部を好み、心材部は被害を受けにくい傾向があります。木材の種類では、ラワン材やナラ材に被害が多く発生しマツやヒノキのような針葉樹はあまり加害されません。その理由としては、針葉樹の材には澱粉含量が少ないことと植物精油(αピネン、ヒノキチオールなど)の忌避効果が考えられます。近年、ラワン材の普及にともなってヒラタキクイムシの被害が目立つようになりました。被害の90%はラワン材が占めるとさえいわれています。

澱粉の多い竹のふしを好んで食害し、ひどくなると内部はぼろぼろに

竹材を加害する甲虫はナガシンクイムシ科のチビタケナガシンクイとニホンタケナガシンクイ、タケトラカミキリカミキリムシ科のタケトラカミキリやベニカミキリなどで、いずれも乾燥に強くてマダケやモウソウダケを好みます。

タケナガシンクイ類の成虫は竹材の切断面や割れ目から穿孔侵入し、孔道内に産卵します。
3-7日後にふ化した幼虫は竹材の繊維に沿って柔組織を食べて育ちます。幼虫期間は20-40日間、蛹期間は約2週間です。澱粉含量の多い節<ふし>の部分をとくに好んで食害し、被害がひどくなると内部は粉状になって脆くなります。

タケトラカミキリの成虫は竹材の裂け目に産卵し、幼虫は内部に穿孔して食害します。加害ステージは幼虫ですが、成虫も羽化して脱出するとき竹材に孔をあけます。

ヒラタキクイムシ、シバンムシ、タケナガシンクイ、カミキリムシなどの木材・竹材害虫は幼虫期に活発な摂食活動をおこない、被害が進行します。殺虫剤を被害材の表面に散布しても材内部への浸透性が小さく、中にひそむ幼虫の駆除は困難です。しかし、殺虫剤の処理は羽化後脱出してくる成虫に対して有効で、産卵を未然に防ぐことができます。したがって殺虫剤の使用は新成虫の出現時期を重点的にねらうのが最も効果的です。羽化した成虫は小さな脱出孔をあけ、虫粉(糞とかじり屑)を排出するので目安になります。

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