ハチの仲間
この種類のハチの仲間が刺すのは主に護身と巣の防衛のため
ハチは膜翅目<まくしもく>(Hymenoptera)に属し、日本から約4,500種記録されています。今回取り上げるスズメバチ類、アシナガバチ類、ミツバチ類はいずれも細腰亜目<ほそこしあもく>の仲間で、胸と腹の間にくびれが見えます。正確にはこのくびれは腹部第1節と第2節の間にあり、胸部に密着した腹部の第1節を前伸腹説<ぜんしんふくせつ>と呼びます。
この体形は産卵や敵を刺すのに適応した進化であり、ハチの中でも原始的な広腰亜目<ひろこしあもく>(ハバチやキバチ)にはくびれがありません。
細腰亜目の幼虫は乳白色、脚のないうじ状で、頭部はよく発達しています。
完全変態をおこない、蛹になると触角、翅、脚などが認められます。
成虫の胸部には2対4枚の翅があり、前翅に比べて後翅は小型です。後翅の前縁には1列の「翅鉤」<しこう>が並んでいて前翅に連結し、飛ぶとき1枚の翅として機能します。
狩人蜂<かりうどばち>のジガバチ類やベッコウバチ類は獲物を毒針で刺して麻痺させ巣に運びますが、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの仲間が刺すのは主に護身と巣の防衛のためです。毒針はもともと腹部末端の産卵管であり毒腺につながっています。したがって、刺すのはメスだけで、オスは刺しません。
女王を中心とした集団生活を営む社会性のハチたち
ミツバチの毒針には逆向きの棘がついているので、刺したら腹端とともにとれてしまうので一度しか刺すことができません。しかし、スズメバチやアシナガバチは何回でも刺すことが可能です。
ハチの毒は生体アミン、ペプチド、酵素の3要素から構成されています。
主な主成分として「生体アミン」はヒスタミン、セロトニンやアセチルコリン、「ペプチド」はアパミン、メリチン、カイニンやカイネイン、「酵素毒」はホスホリパーゼやヒアルウロニダーゼなどです。
スズメバチ類とアシナガバチ類の毒にはセロトニンやヒスタミンが多く含まれており、痛み、発赤、腫脹を起こし、感受性の強い人はアナフィラキシーショックで死に至ることもあります。治療には抗ヒスタミン剤、ステロイド剤、エピネフリンが有効です。
日本には16種のスズメバチ類、11種のアシナガバチ類と2種のミツバチが生息しています。いずれも女王を中心とした集団生活を営み、社会性のハチと呼ばれています。働きバチは生殖能力のないメスで、巣作り、巣の防衛、採餌、哺育などの労働にたずさわる階級です。ミツバチの餌は花の蜜と花粉ですが、スズメバチやアシナガバチは肉食性が強くて主食は昆虫類です。アシナガバチはアオムシを肉団子にして巣に持ち帰り、スズメバチは各種昆虫類のほか樹液や熟した果物や飲み残しの缶ジュースや缶ビールにも群がります。
スズメバチとアシナガバチは秋に羽化した新女王だけが朽木中に潜って越冬し、巣が翌年使われることはありません。
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